研修会概要
※この講座は、講演部分(講座前半)のみ、後日視聴(オンデマンド配信)が付いています。
<講師からのメッセージ>
発達障害は、いまや、一般の方も含めほとんどの人が知っている用語になっています。発達障害の個々についても、自閉症、アスペルガー、ADHDや学習障害など、いくつかの名称は聞いたことがあるという人も少なくないでしょう。また、インターネットやマスメディア、一般の方向けの書籍などで、発達障害に関する情報提供も増えてきています。そして、本講座もそうですが、発達障害に関するさまざまな研修の機会も増えてきています。
このように、発達障害に関する適切な知識が広まることは望ましいことです。一方で、そうした知識を持って、発達障害のある子どもや成人と関わる仕事についている方々の中には、対応の経験が増えるほど、教科書的な知識では理解するのが難しいような状況に出会うことがあるのではないでしょうか。この講座では、発達障害についての理解をより深めるための話題を提供していきたいと思います。講座の前半は、講師からの講義になりますが、どのテーマも現時点では正解が定められないものです。講師の話はテーマに関する一つの考え方として受けとっていただければと思います。
後半は、質疑応答と講師の話を呼び水にしたフリーディスカッションの場としたいと思います。
この講座で、みなさんが日頃感じておられる疑問の全てが氷解することはないだろうとは思います。それでも、「あっ、あれはそういうことだったのかもしれない」と、一つでも手がかりになるようなことを見つけていただければと願っています。
追伸: この講座は、金曜日の夜という時間帯に設定されています。ご家族がおありの方、週末はプライベートな予定がある方には、本当に申し訳なく思います。そこで、少しでも楽しんでいただけるよう、お手元に飲み物や食べ物をご用意いただき、ご参加いただけるようにしたいと思います。どうぞお気兼ねなく、食べたり飲んだりしながらご参加ください。特に、後半は、アルコールでも口にしながら、オンライン飲み会をする雰囲気で意見交換ができればと思っております。
【お知らせ】
[参加制限について] 研修会主催者の責務として、すべての参加者の安全と安心を担保するため、担当講師とも話し合い、研修会開始時に安全のためのルールを提示し、全員がそれに則って進めることにします。それでも、安全と安心が担保できないと判断された場合(開催当日の進行中も含めて)は、当該参加者の研修会への参加を認めない対応を取ります。
<担当講師>
宮本 信也 先生(筑波総合クリニック 小児科医・筑波大学 名誉教授)
▼講師プロフィール
青森県弘前市出身。金沢大学医学部卒業。医学博士。自治医科大学小児科入局、同助手、講師、筑波大学心身障害学系助教授、教授、附属聴覚特別支援学校校長、附属特別支援教育研究センター長、副学長、白百合女子大学発達心理学科教授、副学長を歴任。2023年3月に大学教員生活を終え、現在は、子どもの心の診療に従事している。専門は、発達行動小児科学。趣味は、山歩きと日本各地の銘酒巡り。『愛着障害とは何か』(エンパワメント研究所)、『アスペルガー症候群・高機能自閉症の本-じょうずなつきあい方がわかる』(主婦の友社)等著書・論文多数。
【主催】神奈川LD協会(公益社団法人神奈川学習障害教育研究協会)
▼ 開催方法
生ライブ配信(Zoomミーティング利用)によるオンライン研修
開催前日(概ね10:00~15:00の間)にZoomID等のご案内をメールにてお送りいたします。
※講演部分(講座前半)のみ、後日視聴(オンデマンド配信)付き
・生ライブ配信日の1週間後に、申込登録済のすべての方(生ライブ配信への参加・欠席問わず)へ視聴に必要な情報をメールにて送付します。
・生ライブ配信は参加せず後日視聴を希望の方も、生ライブ配信参加と同じ要領で開催日2日前・午後3時までにお申込み・ご入金ください。
・オンデマンド配信終了日は、2026年3月31日(火)です。
・締切日時以降のお申込みはお受けできかねます。
▼ 申込期限
開催日2日前 午後3時
お申し込みは、下記「参加申込」ボタンからのオンラインフォーム限定となります。
開催日時&当日スケジュール
▼ 開催日時
第1回 2025年9月26日(金)19:30-21:30
■発達障害における自閉スペクトラム症の位置づけを考える
自閉症は、1943年の米国の児童精神科医であるレオ・カナーによる報告から1960年代まで、子どもの精神病の一つ見なされ、親子関係の問題が要因と推測されていました。1970年代以降、脳の障害による問題とする見方が中心となり、現在に至っています。一方、カナーが報告したような一人の世界に閉じこもっている自閉の人は少なく、自閉の人の多くは知能障害がなく、日常生活の中で心理的に不安定になりやすいことが知られるようになってきました。自閉スペクトラム症を、「発達障害」の視点からとらえるだけでよいのか、一緒に考えてみたいと思います。
■注意欠如多動症と自閉スペクトラム症の関係を考える
注意欠如多動症(ADHD)は、自閉スペクトラム症と並ぶ行動問題を中心とする発達障害の代表的なものです。 ASDとの併存 ADHD単独はどれだけ? 報告によりいろいろ ADHDの25~65%にASD症状併存 10~30%が多い? ASDの30~70%にADHD症状併存 30~40%が多い?
■学習障害への支援を考える
学習障害は、文字の読み書きスキルの問題と計算や数学的推論などの算数スキルの問題の二つのタイプに大きくは分けられます。こうした問題については、教育現場でもかなり認識されるようになってきており、担任から学習障害を疑われた子どもたちが医療機関を受診することは珍しくありません。医療機関では、学習障害の診断までは可能ですが、子どもへの直接の指導は行われないのが通常です。現在のわが国では、学習障害のある子どもたちへの治療教育や学校への助言を行うことができる専門機関が極めて少ない状況があります。学習障害のある子どもたちへの支援をどのようにしていったらよいのか、一緒に考えてみたいと思います。
第4回 2025年12月26日(金)19:30-21:30
■軽度知的障害や境界知能の位置づけを考える
知的障害(知的発達症)は、知能の遅れと適応行動の問題の両方が同時に存在している状態と定義されています。知能の遅れは、適応行動の問題から疑われ、知能検査により判断されます。知的障害は、軽度・中等度・重度・最重度の4つの重症度に区分されます。知的障害と年齢相当の知能レベルの中間が境界知能と呼ばれます。軽度知的障害と境界知能の子どもたちは、就学時には言葉の遅れを示さず、集団活動や日常生活行動にも問題を示さないのが通常です。しかし、学年が進に連れ、学習成績の問題は必ず生じてきます。軽度知的障害と境界知能への支援をどう考えていくのがよいのか、一緒に考えてみたいと思います。
第5回 2026年1月30日(金)19:30-21:30
■教育現場で認識されにくい発達問題を考える:コミュニケーション症群と発達性協調運動症
コミュニケーション症群は、コミュニケーション手段の使用や理解に問題をもつ状態です。代表的なものは、いわゆる言葉の遅れ(言語症と呼ばれます)です。言語症の言葉の遅れは、4歳台で日常会話は問題なくなることが多いため、就学時には言葉の遅れに気がつかれることは稀ですが、実際には、就学後も言葉の遅れ以外の問題を抱えることがあります。 協調運動とは、身体の複数の筋肉をバランスよく動かして行うまとまりのある運動のことです。発達性協調運動症は、この協調運動がうまくできないものです。発達性協調運動症では、体育など運動や書字に問題が見られることも少なくありませんが、単に不器用とだけ見なされていることがほとんどです。 コミュニケーション症群と発達性協調運動症は、当人は困難を抱えながらも、教育現場では気づかれないことが少なくないように感じています。この二つの発達障害への気づきや支援について、一緒に考えてみたいと思います。
第6回 2026年2月27日(金)19:30-21:30
■「グレー問題」も含め発達障害をあらためて考える
発達障害の定義や説明は多彩です。医療分野の国際的診断基準の一つであるDSM-5では、発達障害(神経発達症群)について、3つの特徴をあげて説明しています。それらは、『発達期に発症する』、『個人的、社会的、学業、または職業における機能の障害を引き起こす発達上の欠陥により特徴づけられる』、『発達の欠陥の範囲は、学習または実行機能の制御といった非常に特異的で限られたものから、社会的技能または知能の全般的な障害まで多岐にわたる』になります(訳は、日本精神神経学会監修:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(2014)による)。わが国の発達障害者支援法では、発達障害の定義として、『自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの』と示しています。もっとも、法律は、法律の対象を明示しなければいけないため、包括的定義ではなく具体的な名称を示すことになりますから、この条文の「定義」を本来的な意味での定義とは考えない方がよいでしょう。因みに、私自身は、発達障害とは、生来の発達特性を背景として、その時代、その社会で年齢相当に期待されている事柄や行動を適切に行うことができないことが続き支援を必要としている状態と、考えています。発達障害については、また、「グレー」とか「グレーゾーン」などの言葉が使われることもあり、発達障害の概念がさらに混乱させられることもあります。この講座の最後では、そもそも発達障害とは何なのか、どのように考えたらよいのか、ということについて、一緒に考えてみたいと思います。
時間 | 内容 |
19:20~ | オンライン受付開始 メール送付されたURL(Zoom IDとパスコード)に接続してください。 |
19:30 | 開会・ごあいさつ |
19:30~20:30 (60分) |
前半 |
20:30~20:35 (5分) | 休憩 |
20:35~21:30 (55分) |
後半 |
21:30 | 閉会 |